海外から見た奈良観光

奈良コラム

奈良県には観光を楽しめる場所がいろいろとあります。例えば、東大寺を中心とした奈良公園エリア、太古の古墳を楽しめる飛鳥や山の辺の道のエリア、または、神々しい山々を擁する南部のエリア。ただ、海外から奈良はどのような観光地だと捉えられているのでしょうか。本記事では、奈良観光の「海外からの見え方」について読み解きたいと思います。

奈良は海外からどう見られたいか

このクエスチョンに対する解決策の一つは、奈良県(行政)の姿勢を確認することでしょう。以下は、奈良県が作成している「visitnara.jp」というウェブページのスクリーンショットです。同ページを見ると、奈良北部に位置する奈良市はもちろんのこと、奈良中部の吉野、奈良南部の大台ケ原といったように、南北に広い奈良の全景をアピールしようとしています。※中国人観光客が多いので、中国語バージョンも出来ると良いのですが。

「Official Nara Travel Guide ( visitnara.jp )」より

同じく、奈良県の地域振興部観光局は、英語版・中国語版・韓国語版・フランス語版の観光パンフレットを準備しています。奈良県のウェブページの右部のリンクよりダウンロード可能です。ただし、同ウェブページは日本語表記なので、ここから海外の方が観光パンフレットを見つけることは難しそう。別のウェブページからリンクが貼られているなどしているのでしょうか?

奈良県地域振興部観光局のウェブページより

上記の観光パンフレットも、紙面の半分ほどが奈良市について、残りの半分が奈良県の郊外、すなわち奈良市以外の観光地に関する紹介となっています。すなわち、奈良県としては、奈良のすべての地域を外国人観光客に見に来て欲しい。そのような願いがこれらのパンフレットから垣間見れます。

ちなみにですが、同じウェブページに、中国や韓国と奈良のつながりに関して情報が落ちていました。中国と奈良の大仏を比較するなど、面白そうな記事が載っています(中国語は読めませんが・・)。

奈良県地域振興部観光局のウェブページより

奈良は海外からどう見られているか

では、奈良が海外からどう見られているかを確認していきましょう。まずは、欧米から。

欧米

非常に長い歴史を持つ旅行雑誌「Lonely Planet」の奈良のページを確認したところ、トップに現れたのは鹿の動画。1分22秒に渡る映像で、鹿せんべいの話や、鹿がお辞儀をする話などがエモーショナルに語られています。鹿と触れ合えることは奈良県にずっと住んでいる人間でも幸せですが、Lonely Planet ではそこに大きく注目する形の情報提供を行っていました。ビジュアル的には少し控えめに奈良の見どころが掲載されていますが、主に奈良公園・西ノ京・法隆寺エリアと、奈良盆地の北部が紹介されているだけでした。

Lonely Planet の奈良のページより

次に、keywordshitterというサービスで、「Nara Japan」と同時にgoogle検索されているキーワードを確認しました。レストラン・天気・ホテル・マップ・見どころ・アトラクション・歴史・お土産などに交じって、ここにも「鹿」がありました。海外の人が「nara japan deer」と検索しているのですね。ちなみにですが、下から二つ目の「nara japanese narrabeen」は、どうやらオーストラリアのシドニーにある「SUSHI IZAKAYA NARA」というお店に関するサーチのようです。

keywordshitter.com より

ただ、TripAdvisorは少し様相が異なっていました。下の写真から分かるように、石舞台古墳や吉野、奈良南部の奥深くにある玉置神社、または、天川村や十津川村の河川の写真が奈良のトップに確認されました。Lonely Planet と比べると、マニアックな内容が充実していますね。TripAdvisorから奈良を見ると、奈良の様々な側面を伺うことができるようです。

TripAdvisorの奈良の紹介ページより

中国

取り急ぎ、中国の検索サイト百度(バイドゥ)の検索ボックスに、奈良と入力。すると、組み合わせのキーワードとしてトップに出てきたのは、ここでも・・・鹿。中国の方にも奈良=鹿の認識があるようです。どれだけ、奈良=鹿のイメージが強いのでしょうか(笑)。次に出てくるのは「京都」ですが、京都と奈良を一緒に旅行することなどを調べようとしているのでしょうか。

百度より

次は、百度の検索結果で現れた「穷游」という旅行情報サイト。同サイトにおける奈良の見どころは、ほぼ奈良公園周辺に集まっていました。東大寺・春日大社・興福寺・東大寺二月堂・ならまち・若草山など。

穷游の奈良の紹介ページ より

下は同じく穷游のコンテンツですが、面白かったのが「奈良」と「宇治」をひとくくりにしているところ。東京・京都・北海道はそれぞれ独立して紹介されているのに対し、奈良と宇治がひとまとめでパンフレットのようになっているようです。宇治も奈良も京都市の郊外と捉えると、理解はできますけれども。

見られ方のギャップ

奈良県としては、奈良公園だけでなく、吉野や大台ケ原も含めた奈良の全景を海外の方に知ってもらいたいと思っているのに対し、海外から見た奈良は、まずは鹿、そして、奈良公園の周辺までのイメージに留まっていました。一部、TripAdvisorだけ、奈良のマニアックな観光地まで紹介されていました。

海外の方が奈良に行ってみようと思った時、恐らく、上記のような情報源にアクセスするでしょう。その時、鹿と触れ合えることにワクワクし、そこを中心としながら奈良公園の散策を旅程に組み入れるのでしょう。ただ、それ以上の情報に触れないために、奈良公園以外の観光スポットに行くという発想すら沸いていない可能性があります。

奈良を訪れる海外の観光客がますます増えてきている中、奈良県が何かアクションをとるとしたら、上記のような海外の旅行サイトに奈良の全景を紹介してもらうように働きかけることができるかもしれませんね。

今回の読み解き手法
奈良の行政の観光戦略と海外の旅行サイトで紹介されている奈良のギャップを分析。
参照
The Official Nara Travel Guide
奈良県地域振興部観光局
Lonely Planetの奈良の紹介ページ
KeywordShitter
TripAdvisorの奈良の紹介ページ
百度
穷游の奈良の紹介ページ
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