奈良に対する解像度を高める観光ガイドというお仕事

奈良コラム

奈良で「うるわし奈良」というガイドを企画している方と縁があり、何回かツアーに参加させていただきました。ツアー中のお話を聞きながら奈良の見え方が変化していくのを面白く感じました。違う言葉で言えば、奈良に対する解像度が高まっていく感覚。今回は、そのようなガイドというお仕事について考察してみたいと思います。

奈良に対する解像度を高める

「解像度を高める」とは?

写真に詳しい人なら、写真を見た時に「きれい」の一言では済まさず、「逆光で撮っているから透明感が出ているよね」とか「単焦点カメラだから綺麗にボケているよね」などと、その特徴を細かく語れるでしょう。

競馬に詳しい人なら、馬が走る姿を見て「迫力ある!」の一言では済まさず、それぞれの馬がどの親から生まれ、どこで育ち、どのような勝負をしてきたか、そんな馬のドラマを細かく語れるかもしれません。

サトタケは薬膳を勉強中なので、エビを見ると「気を補い身体を温める助陽類」、柿を見ると「喉を潤し咳を止める止咳平喘類」などと反応してしまいます。

ここで言う解像度とは、どれだけ細かくその物事を理解できるのかという意味で使っています。「奈良に対する解像度を上げる」とは、奈良を歩く中で、その魅力や面白さに細かく反応できる(気づける)ようになる、ということを意味します。

以下、解像度が高まる例として、「うるわし奈良」さんのイベントでいかにサトタケの解像度が高まったかをご紹介したいと思います。記憶があやふやで内容が間違っている箇所があるかもしれませんが、その場合はスミマセン!

例:薬師寺と唐招提寺について

前知識として知っていたこと

西ノ京エリアにある有名な二つのお寺。世界遺産「古都奈良の文化財」の一部をなす。薬師寺は「薬」がつくお寺なので、薬師如来などが本尊なのかな?一度来たときは、薬師寺の東塔が改修中で見れなかった。・・・という程度。

ツアーで学んだこと

2020年のお正月の初詣ツアーで薬師寺と唐招提寺に参拝しました。

まず薬師寺ですが、ここは法相宗のお寺で、始祖の慈恩大師とその師である玄奘三蔵(三蔵法師)が祀られています。金堂を北に構え、南側に西塔と東塔が位置します。東塔が特に古いのですが、これは度重なる火災で金堂や回廊が焼け落ちる中、自分の命も顧みず必死に水をかけて東塔を守り抜いたお坊さん方がいたから現在も残っているそうです。熱い男たちのドラマが繰り広げられていた訳です。

本堂の奥には玄奘三蔵が祀られている伽藍があります。玄奘三蔵は中国のお坊さんで、ちゃんとした仏教経典のなかった中国のためにインドに渡り、インド仏教の経典を中国語にひたすら翻訳を続けた方です。一生、翻訳作業を続けられたと言われています。すごい情熱ですね。伽藍の上に掲げられている「不東」の文字は、インドでちゃんと学びを得られるまでは東(中国)に帰らないという意思表示の言葉です。

薬師寺には吉祥天女さんも祀られており、1年のうち数日の間、麻布に描かれたその姿を拝見できます。左手には如意宝珠(願いを叶えてくれる魔法の玉!)を持っています。如意宝珠は800円で売られているので、願いを叶えたい方は是非、薬師寺に行ってご購入ください・・・いい音のなる鈴です(笑)。

次は唐招提寺へ。鑑真和尚が仏教修行の道場としてはじめたお寺ですが、お弟子さん方の尽力によって立派なお寺として完成したそうです。金堂の左に位置する千手観音はとてもイケメンで、実際に目にしていただきたいのですが、その手は本当に千本あるそうです。正月の間は千手観音さんのお守りが無料で配られているので、ゲットしてきました。

鑑真和尚が来る前の奈良は、僧侶は金銭面で優遇されるということもあって、いいかげんな僧侶であふれかえって社会秩序が乱れていたそうです。しかしこれではダメだと中国の高僧をお招きし、そこに応えてくださったのが鑑真和尚。ただ、船が難破したり中国政府につかまったりなどして、12年間、日本に渡ることは出来ませんでした。そしてやっと日本に渡ったと思えば、10年ほどで亡くなってしまいます。その10年間、日本のために人生を賭して頑張ってくれました。鑑真和尚は仏教だけでなく、薬や砂糖なども日本にもたらしたと言われています。唐招提寺には鑑真和尚のお墓や、僧となるための授戒を行う戒壇が今も残されています。

例:「ならまち」について

前知識として知っていたこと

古い民家も残る歴史地区。かつて、広大な元興寺の境内だった場所。最近は古民家カフェなど、街のリニューアルが進んでいる・・・という程度。

ツアーで学んだこと

元興寺の痕跡が街の中に残っている。例えば、本堂のあった場所は現在民家になっているが、道路が接しており、元々の本堂の形に沿って道がカーブしている。また、漢方で有名な菊岡漢方薬局の屋根には小さな像が飾られているが、これは町の風水を整える意味があり、そこで流れを変えた“気”を他の家の屋根の像にバトンタッチしている。

平城京も平安京も条坊制で、一条や二条は高級官僚の住むところ、五条や六条になると下級官僚の住むところ。三条や四条はその中間に位置します。今でも、京都では三条や四条あたりが、奈良では三条通りが賑わっていますね。

無料で開放されている「奈良町にぎわいの家」はならまちのお金持ちの家を公開したもの。きらびやかな仏間や静寂を感じさせる客間も素晴らしいけれども、床の間の「柱」にもこだわりが見られる。左右で素材を変えた床の間の柱であったり、柱を途中で切り落として見通しを良くする趣向があったり。

以上のように、薬師寺や唐招提寺やならまちについて知識の薄かったサトタケが、「うるわし奈良」さんのガイドを聞いて、それらについてちょっとは語れるようになったことをお分かりいただけたのではないでしょうか。ガイドを受けて、それらの寺社に対する解像度が高まりました。

奈良に対する解像度を高めることの価値

奈良に対する解像度を高めるメリットについて、二つご説明したいと思います。

観光客にとっての価値

「大阪に美味しいものを食べに行こう」「京都で和の文化を体験したい」といったような分かりやすいストーリーを語りづらいのが、奈良。「奈良には鹿くらいしか楽しいことがない」と言われることにも一理あります。

長い歴史を通して多くの人が集まり文化が醸成されていった大阪や京都と比べると、ずっと田畑だらけであった奈良には現代人に分かりやすい文化が少ないのかもしれません。

平城京は150年ほど前に「発見」され、そこからその古代都市の発掘が始まった訳ですが、奈良に関する面白さにも発掘が必要だと言えそうです。今はただそびえたつ薬師寺の東塔にも、かつては熱いドラマがあった。そのドラマを知れば、そんな建築物が今でも残っていること自体が奇跡で、感動を禁じえません。

そのドラマの語り部として観光ガイドが必要なのだろうと思います。

住む人にとっての価値

サトタケは30年以上奈良に住んでいるのですが、お恥ずかしながら最近まで奈良は「寝に帰る場所」でした。ただ、奈良を伝える活動を始め、「うるわし奈良」さんのツアーなどにも参加していると、自分が住んでいる場所の魅力が分かり始め、県内で遊ぶことが多くなりました。

可愛いニワトリが放し飼いされている石上神宮に初詣に行ったり、桜の季節には吉野の三万本の桜を見に行ったり、奈良県が開発したイチゴ品種の八代目「古都華」を楽しんだり、会社をサボってならまちの古民家カフェで嫁さんとお茶をしたり。すなわち、奈良に対する解像度が高まることで、奈良に住む人間の日々の行動も変わるのだと思います。多くの観光客が国外・県外から来てくださることもとても嬉しいですが、県内に住む人も県内のコンテンツを楽しむ。そんな活気のある県になれるといいなぁと思います。

どうやって奈良に対する解像度を高める?

奈良に対する解像度を高める方法はいろいろありそうです。リンク先で例を紹介しています。

・観光ガイド付きのツアーに参加してみる
観光サイトを訪問してみる
・Facebook等のコミュニティに参加してみる
・奈良をテーマとした文学作品/コミック/映画などを楽しむ
・奈良テレビの番組を観てみる
・YouTubeで「奈良」を検索してみる
・歴史の勉強会に参加してみる
奈良検定に挑戦してみる
・実際に遊びに行く
・奈良の社会活動に参加してみる・
・奈良のアンテナショップに行ってみる
など

これらの中で、実際の奈良を見ながら知識も得られる「観光ガイド」は、奈良にアクセスできる方ならば最も効率の良い方法かもしれませんが、あなたもお好きな方法を見つけて、奈良に対する解像度を高めてみてはいかがでしょうか。

個人で奈良の観光ガイドをされている「うるわし奈良」さんのサイトへは、ロゴをクリック。

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