電車で行く、奈良の観光・アクティビティ

奈良コラム

奈良の観光案内所にはたくさんの旅行ガイドやパンフレットが置かれていますが、自動車のない旅行者にはアクセスしづらい場所も多いのが現状。この記事では、「電車で行ける場所」に限定した奈良の観光地やアクティビティをまとめたいと思います。

奈良の電車事情

まず、基本情報として、奈良県には二つの鉄道会社しか入っていません。ひとつは近畿日本鉄道(近鉄)、もうひとつは西日本旅客鉄道(JR西日本)。そのいずれかの鉄道を通して、京都や大阪からも奈良にアクセスが可能です。

また、奈良県の南部は険しい山岳地帯で、鉄道が通っていません。そのため、電車を使った奈良観光は、奈良県北西部に位置する奈良盆地が中心となります。奈良県に関係するユネスコ世界遺産は3か所(候補地も含めると4か所)あり、それらのいずれもが電車でアクセス可能となっています。

奈良駅から奈良公園へ

奈良県下で最も観光客が集まるのは奈良駅から奈良公園に渡るエリア。そこでの一番人気は「鹿」でしょう。鹿の写真を撮ったり、お辞儀をする鹿に鹿せんべいをあげたりと、町そのものが入場無料の動物園のようになっています。

鹿と挨拶をしながら、東大寺の大仏や、全国の春日神社の総本社である春日大社に参詣しに行ったりしても良いでしょう。春日大社から少し足を延ばして、春日山原始林の巨木エリアをハイキングしても良いでしょう。または、興福寺の国宝館で仏像を鑑賞したり、ならまちの路地で美味しいものを食べても良いかもしれません。そしてそれらの施設の多くはユネスコ世界遺産(古都奈良の文化財)となっています。ただ、見どころが非常に広域に渡るので、全部歩いて見て回るにはそこそこの体力が必要となります。

なお、「奈良駅」としては近鉄奈良駅とJR奈良駅の二つの駅が存在し、その二つの駅は1kmほど離れています。上記の観光地に近いのは近鉄奈良駅のほう。近鉄奈良駅までの所要時間は、大阪駅から約1時間、京都駅から約40分ほどとなっています。他の観光地へのアクセスに応じて、それらの二つの駅を使い分けると良いでしょう。

JR法隆寺駅から法隆寺へ

奈良県で最も早くユネスコ世界遺産に登録されたのは「法隆寺地域の仏教建造物」で、JR法隆寺駅から徒歩で20分ほどの距離。JR奈良駅からJR法隆寺駅までは電車で約10分。

法隆寺は聖徳太子によって建てられたとされる、現存する最古級の木造建築物。建築物はそれはそれで美しいですが、個人的に魅力に感じたものは2点あります。

ひとつは、五重塔の内側に設置されている塔本塑像。土で洞窟のような舞台を造り、お釈迦さんに関係する4つの場面を描いているそうです。塔の1階の部分に設置されており、塔の外側から見ることが可能です。不思議な空間。

法隆寺五重塔と中宮寺菩薩半迦像の写真はWikipediaより

もう一つは、大宝蔵院と呼ばれる境内の展示スペース。様々な仏像が安置されています。一番の見どころは百済観音像ですが、いろいろな年齢の聖徳太子の像も置かれており、飛鳥時代の天才の表情を伺い知ることができます。

また、法隆寺の隣に位置する尼寺、中宮寺の本尊である如意輪観音さんはとても美人ですので、法隆寺に行かれた際には是非、足を延ばして行ってみてください。

近鉄飛鳥駅から飛鳥エリアへ

古墳時代から飛鳥時代までの様々な史跡を楽しめる飛鳥エリア。近鉄飛鳥駅が最寄り駅となります。近鉄奈良駅から近鉄飛鳥駅までは約50分。そのエリアは「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」としてユネスコ世界遺産の暫定リストに記載されています。

近鉄飛鳥駅の駅前には、自転車や原動機付自転車のレンタルサービスがあります。各史跡はそれぞれ少し離れている場所にあるので、自転車やバイクで回るのが良いでしょう。

このエリアの見どころは大きく二つに分けられます。一つは、古墳。石舞台古墳、高松塚古墳、キトラ古墳といった有名な古墳があります。石舞台古墳は中にも入ることができ、そのひんやりとした石室の空間を肌で感じることができます。

もう一つは、インパクトのある仏像。岡寺の如意輪観音や飛鳥寺の飛鳥大仏は、本堂の中で面と向かうとすごく圧倒されます。大きくて存在感のある仏像の前では、隠し事などできない気分になってしまいます。その畏怖の感覚を、是非、実際に体験していただければと思います。

また、自転車で回るのは大変ですが、少し北に行けば藤原京跡を訪問できます。耳成山・天香具山・畝傍山といった大和三山に囲まれた風光明媚な都の跡地でタイムトラベルしてみても良いかもしれません。

近鉄吉野駅から吉野へ

近鉄奈良駅から約90分の場所に位置する近鉄吉野駅。桜の季節に、その駅は人で溢れかえります。何万本もある桜の樹海を見に来るのですね。吉野駅からケーブルカーやバスで少し登った場所が見どころです。

金峯山寺混合蔵王権現の写真は金峯山寺のウェブページより

吉野で最も有名な寺院は、金峯山寺。金峯山寺を含む吉野一帯が、「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコ世界遺産に登録されています。パワースポットに関心のある方は、訪れてみてください。金峯山寺の巨大な青い秘仏、3体の蔵王権現さんは、毎年、期間限定で公開されています。

その他の見どころ

日本で最も古いケーブルカーに乗って、生駒山山頂のレトロな遊園地を楽しみたい方には、近鉄生駒駅が便利です。ケーブルカーは子供向けに犬や猫の装飾がなされていますが、その路線は100年以上前に開業したもの。金運のパワースポットとしても有名な宝山寺も道中にあり、帰りは参道を歩いて生駒駅まで戻ることも可能です。

奈良の金魚を見てみたい方には近鉄郡山駅が便利です。金魚資料館を見学したり、金魚の養殖池を訪問したり、町の至るところにある金魚のイラストやモニュメントの写真を撮ったりと、町をぶらぶら歩きながら金魚の時間を満喫できると思います。金魚グッズだけを販売しているお土産屋さん(おみやげ処こちくや)や、金魚を見ながらコーヒーを飲めるカフェ(柳楽屋)も要チェック。

遊園地の写真は生駒山上遊園地のウェブページより、金魚の写真は大和郡山市観光協会のウェブページより

日本最古の古道「山の辺の道」をハイキングしたい方は、天理駅(JR天理駅/近鉄天理駅)で降りると便利です。天理駅前の商店街を抜けてしばらく歩くと、ニワトリが放し飼いされていることで有名な石上神宮に到着。そこから山の辺の道を南下していきます。途中、様々な古墳や三輪神社の傍らを通りながら11kmほど歩くと近鉄桜井駅に到着します。途中、随所で蓮が育てられており、夏には綺麗な花を楽しめます。石上神宮と三輪神社はいずれも、日本最古級の神社。

これらを参考に旅行の計画を立て、奈良の観光を楽しんでいただければと思います。

歴史を理解しながら観光を楽しむ

なお、別の記事で、奈良の歴史を簡単に解説しています。そちらも見ていただきながら、奈良旅行の計画を立てていただければと思います。

今回の読み解き手法
著者の電車による訪問体験をベースに情報を整理。
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