奈良と外国人観光客

奈良コラム

海外から奈良に訪れる方は年を追うごとに多くなってきています。平成29年の段階で、その数は年間約200万人。海外の方に奈良に興味を持っていただけることは嬉しいですね。本記事では、奈良に来る外国人観光客について、マクロなトレンドを読み解きたいと思います。

どの国から、どれくらいの人が来ているのか

まず、どのくらいの海外の方が、奈良に来ているのでしょうか。以下は奈良県が政府発表の数字をベースに試算した、外国人訪問客のグラフです。平成29年の段階で、全国では2,900万人の方が日本に訪れていました。それに対して奈良は、年間200万人。

奈良県のウェブサイトより「外国人訪問客数

そして、特徴的なことは、その伸び率です。平成24年と比べて全国レベルでは海外の訪問者数は約3倍。それもすごいですが、奈良県は平成24年の28.5万人と比べて約7倍。恐らく奈良県への訪問目的は観光がメインでしょうから、その数は観光客数に近いと考えても良いでしょう。

では、どの国の旅行者が奈良県に来てくれているのか。下のグラフにあるように、圧倒的に多いのが中国。奈良県に来る外国人観光客の二人に一人が中国から来た方という訳です。

奈良県のウェブサイトより「外国人訪問客数

それに続き、台湾、韓国、香港。その次がやっと欧米人の方で、米国となります。左にある全国レベルでの統計と比べると、近隣のアジア諸国から来る方の割合がいかに多いかが分かります。

奈良に訪問する前は、どの都道府県に滞在しているのか

外国人観光客は、どのような行程で日本の旅を楽しんでいるんでしょうか。そして、その中で奈良はどのように位置づけられているのでしょうか。

以下は、外国人観光客が奈良県に訪れる前にどの都道府県に訪れていたのかを可視化したものです。最も多いのが京都府、それに続いて大阪府となっています。京都や大阪に旅行に来た外国人観光客が、奈良にも訪れる。各エリアと奈良県の近さを考えても、当然の結果だと言えるでしょう。ただ、この結果は、観光客の出身国によって、どうやら違っているようなのです。

厚生労働省&内閣官房「地域経済分析システム」 ※外国人移動相関分析

以下は、平成30年度版の観光白書のデータなのですが、出身国別、同時に、日本への訪問回数別に、旅行者がどの都道府県を訪れたかを示した図です。一番左は、日本に初めて来た中国の観光客がどこに訪れたかを示し、東京・愛知・京都・大阪が多いことを示しています。ただ、訪問回数が10回以上になると、すなわち一番右の図では、それが日本全国に広がっていっています。日本旅行を繰り返していく旅に、地方にも目を向けて行っていることが分かります。ただ、中国地方、四国地方、東北地方への訪問は薄いですね。奈良県への訪問で見ると、1回目~9回目の日本旅行では10%以上の方が来てくれていると読み取れます。

国土交通省「観光白書 平成30年度版

次の図は奈良県への訪問者数が第2位の台湾人観光客のデータです。台湾から来てくれている観光客の特徴は、リピートするごとに、中国人以上に、地方への訪問率が高いこと。一番右の図を見てもらえれば分かりますが、全国津々浦々、旅を楽しんでくれているようです。そのためか、奈良県への訪問は、1回目の日本旅行で10%以上であるのに対し、2回目以降はそれ未満となっています。

国土交通省「観光白書 平成30年度版

次の図は、 奈良県への訪問者数が第3位の韓国人観光客のデータです。中国人観光客・台湾人観光客とは全く様相が異なり、京都・大阪・東京、そして、福岡といった都市を中心とした旅行を行っているようです。10回以上リピートしていても、同じエリアの旅行を楽しむというスタイルのようですね。

国土交通省「観光白書 平成30年度版

上記の分析は、各国からの飛行機の直行便があるかどうかにも依存しますし、日本旅行を行う際の日数にも依存するでしょう。ご自身で分析を深める際には、それらの情報も確認いただければと思います。

外国人観光客に人気のエリアはどこか

最後に、外国人観光客に人気のエリアを奈良県内で見ていきましょう。

厚生労働省&内閣官房「地域経済分析システム」 ※外国人メッシュ

上の図は、「そのエリアに1時間以上滞在した外国人観光客が何人いるか」を示すヒートマップです。赤が最も多いエリア。図の中心にあるのは大阪府で、赤色だらけですね。奈良は、少し離れて右に位置する小さな赤色のエリアですが、大阪に比べると範囲は狭いですね。

上の図は、奈良盆地のエリアを拡大したものです。最も人気の高いのが地図右上の平城宮跡~奈良公園エリアですね。平日・休日を問わず、外国人観光客がたくさん来られています。世界遺産( 古都奈良の文化財:1998年12月登録 )にも指定されているエリアです。中央左側の法隆寺も、世界遺産( 法隆寺地域の仏教建造物:1993年12月登録 )として登録されています。

一番下の飛鳥エリアは古墳時代~飛鳥時代(七世紀まで)、平城宮(八世紀)は奈良時代といったように、それぞれの観光エリアの時代背景は異なるので、奈良の歴史を理解しておくと、観光エリアの理解も深まるように思います。当サイトでも奈良の歴史をとても簡単に整理しているので、よろしければご参照ください。

また、山の辺の道にある飲食店経営者に教えていただいたのですが、山の辺の道にはアジア人はあまり来ず、欧米の方が多い印象だとのこと。ディープな楽しみ方をしているのは、実は欧米人の方なのかもしれないと想像が膨らみます。

今回の読み解き手法
行政が公開している統計(リサーチ結果)を見ながら、奈良を訪れる外国人観光客に関して俯瞰。
参照
国土交通省「観光白書 平成30年度版
厚生労働省&内閣官房「地域経済分析システム
奈良県「外国人訪問客数